2015年2月22日日曜日

水野忠彦博士のグロー放電による新しい常温核融合炉の特許

水野忠彦博士が発明者で、水野博士の水素技術応用開発株式会社と株式会社クリーンプラネットが出願人となっている新たな国際特許が公開されています。国際公開番号は WO2015/008859 です。


以下が要約部分です(赤字は引用者による)。いわゆる常温核融合反応のことを「トンネル核融合」と呼んでおられるようです。おそらく、「ホスト金属中でのクーロン障壁について」で書いた、金属中に原子核がある場合におこるトンネル効果を意図された用語だと思います。
要約: より安定的に従来に比べて熱を発生することができる反応体、加熱装置及び加熱方法を提供する。この反応物(26)が表面に形成されたナノサイズの金属ナノ粒子(金属ナノ突起)を含む水素貯蔵金属を含み、水素原子が反応に金属ナノ粒子に格納されている場合、そのように重水素ガス雰囲気の反応炉内に配置される(26)において、電子は、強く、周囲の金属原子と他の電子によって影響を受けた金属ナノ粒子は、のように重い電子が作用し、前記結果として、金属ナノ粒子中の水素原子の間の核間距離を収縮させることが可能となるトンネル核融合反応の発生の確率を高めるため、これにより、より安定的に従来に比べて熱を発生するようになっている。
この特許で示された方式には幾つかの特徴があります。まだ余り読めていませんが、私が気付いた点を以下に挙げます。

特徴の1点目は、グロー放電を使った常温核融合反応炉であることです。これは[0021]に記載されています。
[0021] ここで本発明では、電極として機能する反応体26の表面に、ナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成することで、重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26によりグロー放電を発生させた際、金属ナノ粒子中に水素原子が吸蔵され、ナノサイズの金属ナノ粒子内の電子が周囲の金属原子や他の電子から強く影響を受けて重電子として作用し、その結果、金属ナノ粒子内での水素原子間の核間距離が縮み、反応炉2内において中性子を放出しながら熱を発生させる核融合反応を起こさせることができる。
特徴の2点目は、「プラズマ処理」によって、電極の表面に金属ナノ粒子構造を増やしたり、金属表面の酸化皮膜を除去して反応性を上げる工夫です。これは[0022]に記載されています。
[0022] 因みに、この実施の形態においては、後述するプラズマ処理を行うことにより、反応体26を反応炉2内に設置した後に、当該反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を形成するが、本発明はこれに限らず、反応体26を反応炉2内に設置する前に、反応体26に対してスパッタ処理や、エッチング処理等を行い、当該反応体26の表面にナノサイズでなる複数の金属ナノ粒子を予め形成しておき、当該金属ナノ粒子が表面に形成されている反応体26を反応炉2内に設置するようにしてもよい。但し、この場合であっても、重水素ガス雰囲気中で巻回型反応体25及び反応体26により炉内にグロー放電によるプラズマが発生した際に、水素原子が金属ナノ粒子内に吸蔵し得るように、後述するプラズマ処理を行い、反応体26の表面の酸化被膜を除去し、表面の金属ナノ粒子を活性化した状態にする必要がある。
特徴の3点目は、リチウム等の元素を添加することで反応を促進できるとしている点です。これは[0039]に記載されています。
[0039] なお、反応体26は、重電子水素原子間の核融合反応発生確率を増やすために、例えばアルカリ類や、アルカリ土類原子(例として水素原子構造を持つ、Li、Na、K、Ca等)を金属ナノ粒子の表面に添附してもよく、これにより金属ナノ粒子中での電子の受け渡し作用を大幅に増加させることができ、一段と核融合反応発生確率を上げることができる。本発明の発熱装置1では、このようにして核融合反応を安定的に起こさせ、核融合反応時に生成される大きなエネルギーによって、安定的に発熱し得る。
特徴の4点目は、この反応によって中性子の発生を計測しており、かつ、放電電圧によって中性子発生量を制御しているとしている点です。これは、[0042][0043]に記載されています。
[0042] これとは別に、発熱反応処理を行うため、反応体26を反応炉2から取り出すことなく、上述したように電極対に1[kV]を印加してグロー放電を発生させ続け、反応炉2内を10^-6気圧程度とし、ガス供給手段3により反応炉2内に重水素ガスをガス圧10^-2気圧で供給した。これにより発熱装置1では、1~2分後に中性子測定手段19によって中性子が測定された
[0043] 次いで一旦、グロー放電を中止し、反応炉2内に重水素ガスを補給した後、十分に電極対を冷却し、再び電極対に1[kV]の電圧を印加してグロー放電を発生させた。これにより中性子測定手段19によって、再び中性子を測定し始め、この後、中性子を数時間継続して測定した。ここで、中性子の測定結果を図3に示す。図3に示すように、この発熱装置1では、グロー放電を起こさせるために電極対に電圧を供給した後から急激に中性子が発生していることから、反応炉2内で中性子発生を伴う核融合反応が起こっていることが推測できた。また、このような中性子の発生数は、電極対の放電電圧によって制御でき、電圧の指数関数で発生中性子数が増加することが確認できた。なお、安定的な中性子の発生は、電圧の供給により、10^6個が得られた。発熱反応を200秒間継続させたときの反応体26の単位面積あたりの中性子発生量を計算したところ10^5個であった。 
図3

以上に挙げた特徴のうち、中性子発生を制御できるとしている点は、常温核融合炉に新たな応用を切り拓く可能性がある非常に重要な特徴だと思います。今後の動向を気にしておく必要があるでしょう。

また、ちなみに、もちろん過剰熱検出の結果についてもデータが示されています(表1や表3)。



以上



2015年2月16日月曜日

2月27日にイタリアのミラノでLENRエコシステム構築に向けた会議開催

常温核融合技術を核としたエコシステム構築を目指すLenr-Citiesが2月27日にイタリアのミラノでミーティングを開催します。どういう顔ぶれが集まるのか興味深いですね。


以上

エネルギーセクター全体でかつてないほどにショートポジション比率が高まる

もう一つSifferkollアナリストのブログに興味深い記事が出ています。「原油価格の下落の原因は常温核融合なのか?」では触れなかったのですが、原油価格に対して投資家がショートポジション(値下がりを予想)を取っていると、このアナリストは指摘していました。

今回、更に、エネルギーセクター全体で、ショートポジションの比率が高まっているとのニュースを載せています。確証はありませんが、もし常温核融合が契機だとすると納得できる話ではあります。常温核融合によって他のエネルギー源が徐々に淘汰されていくのは時間の問題でしょうから。市場の動きにも時々目を向けないと、知らないうちにたいへんな事が起こりそうですね。


以上



2015年2月15日日曜日

世界最大の資産運用会社ブラックロック社は2012年6月に常温核融合を注視すると報告

原油価格の下落の原因は常温核融合なのか?」で、常温核融合装置を検証したLuganoレポートをBlackRock社がダウンロードした直後から原油価格の下落が始まった事を指摘した記事をSifferkoll社のアナリストが書いていることを紹介しました。

このブラックロック社は世界最大の資産運用会社らしく、その資産は実に558兆円という巨額なものです。


Sifferkoll社のアナリストが2015年2月10日付けでまた重要な指摘記事をアップしました。ブラックロック社は、実は、2012年6月に発行した報告書(以下)の中で低エネルギー核反応(常温核融合)のような新技術を実験しているスタータップ(新興企業)を注視していくと明言していたのです。
http://www.blackrock.com/corporate/en-us/literature/whitepaper/us-shale-boom-us-version.pdf
元のブログ記事は以下にあります。


上記で引用されている文章には以下のような文章が続いており、決して短期の話をしているのではなく、経済的に十分な大きさになるまで見守る必要があると述べています。とはいえ、2012年の時点で既に公式の報告書に常温核融合が登場していたのは驚きです。ブラックロック社を始め、世界の投資家は既に常温核融合の進展を注視しているのかもしれません。日本でも早くアナリストやジャーナリストが警鐘を鳴らしてくれることを切に望みます。
This is a race for long-distance runners, not sprinters. It took sun and wind power more than three decades to become competitive. Corporations follow developments in new technologies closely, but will treat them as side bets until they reach economic scale. Investors would do well to take the same approach, we believe.
以上

2015年2月9日月曜日

MFMPの「犬の骨プロジェクト」でE-Catの再現実験中

先週からMFMP(マーチン・フライシュマン記念プロジェクトでは、E-Catの再現を目指して実験が開始されました。Live Open Scienceを標榜する彼らですから、実験の模様はできるだけ実況中継されています。その中で注目すべき部分はYouTubeにアップロードされて、気楽に見ることができます。

以下は、Dr. Bobが作ったこの再現実験~コード名「犬の骨プロジェクト」~のイメージビデオです。知らない人には何のことやら分からないでしょうが、元気はでるかも。



先週末に行われた実験では、実験中に突然の装置の破断が起こるアクシデントがありました。これが過剰熱によるものかどうかははっきりしませんが、その様子をまとめたビデオが投稿されています。最後の方で破断が起こって、興奮している様子が分かります。




以下の動画では、実験装置の中核部分を作る作業の要点が説明されているようです。発熱実験の模様も最後の方に出てきます。



どういう結果が出るのかワクワクしながら実験のニュースを聞いています。実験の様子が生で見られるなんて、素晴らしい時代になったものです。

以上

2015年2月8日日曜日

ノルウェーを見習い、常温核融合が産業に与える影響を日本も早く検討すべきだ

ノルウェーのWeb雑誌に、「常温核融合-本当なら石油に価値はなくなる」という題名の記事が2月5日に掲載されたことが、E-Cat Worldで取り上げられています。ノルウェー語なのでしょうか? 原文はさっぱり分かりませんが、冒頭に掲げられた図がロッシ氏のE-CatのLugano検証レポートを意識している事は分かります。


E-Cat Worldに載った部分的な英語訳を見ると、著者のOdd Richard Valmot氏は、常温核融合の商用化の可能性による影響を調べており、ノルウェーで常温核融合セミナーを開いたNils Holme氏にインタビューしています。そのNils Holme氏の言葉を引用します(勝手に和訳をつけました)。
“It is time that physicists stop ridiculing LENR. Now we have two experiments that are supervised by respected, unbiased physicists. One of those who participated in the experiment in Italy, is senior lecturer in theoretical physics at KTH Hanno Essén, has even led the Swedish skeptic Association. He is not easy to convince with something that can not be explained, but he accepts it as can be observed. There is little doubt that this works.”
今や物理学者は常温核融合を嘲るのをやめる時だ。尊敬されており、バイアスの無い物理学者によって実施された2つの実験結果がある。イタリアで行われた実験に参加していたのは、KTHの理論物理のシニア講師であり、スウェーデン懐疑協会の会長だったHanno Essén氏だ。彼は説明できない事を簡単に信じたりしない。しかし、彼は観察された事実を受け入れた。これが動作することについては疑いの余地は少ないのだ。
そして、Holme氏は常温核融合の影響について以下のように述べています。
“LENR is potentially devastating to our economy, and we should rather see how Norway can secure a place in this development. This may come quicker than it takes to plan and develop new oil fields.”
常温核融合は我々の経済をぶち壊す力を秘めている。どのようにすれば、この展開の中でノルウェーの地位を守れるかを考えるべきだ。新しい油田を企画・開発するよりも早く事態は訪れるかもしれない。
Frank Aclandさん(E-Cat Worldの主宰者)が言うとおり、ノルウェーで影響力のある人達が常温核融合の現実性に気が付きつつあることを示すエピソードだと思います。

エネルギー源としての常温核融合の持つ比類なき実力は、以下のラゴンプロットに良く現れています。エネルギーの効率性という観点で、従来の火力・水力・風力・太陽光などの技術は全く足元にも及ばないのです。常温核融合の安全性が確認されれば、全てのエネルギー源は徐々に駆逐されていくでしょう。



ノルウェーは、石油大国なので事態を重く受け止めています。
翻って日本はどうでしょうか。いまだに、高コストでリスクの大きい原子力発電をベースロード電源に位置づけ、せっかく全機停止している原発を再稼働するという愚策をとろうとしています。常温核融合が認知されれば、誰も原発に投資しなくなります。全ての原発は廃炉に向かうしかないでしょう。日本では「資産」として計上されている核燃料廃棄物も、今度こそゴミとして扱うしかなくなるでしょう。早く常温核融合を視野に入れたエネルギー&産業施策を検討すべきだと思います。

以上

2015年2月1日日曜日

Alexander G. Parkhomov博士が研究会で実験の詳細を明かす

最近、常温核融合ウォッチャーの間では、ロシアのAlexander G. Parkhomov博士が行ったE-Cat風の常温核融合装置による過剰熱検出実験の話で持ちきりです。E-Catで用いられた素材から独自に装置を再構成し、全く独立に行われた追試で3倍近いCOPを計測したのに加え、Parkhomov博士は実験の情報をオープンにする姿勢なので、注目されるのは無理もありません。

幾つか重要な情報が公開されたので記録しておきます。

まず以下は実験の模様を撮影した動画です。ロシア語らしく、何が語られているのかは全く分かりませんが、実験装置や計測機器の様子が良く分かります。



また、この件については、Peter Gluck氏がブログやメーリングリストで精力的に取り上げておられます。1月31日のEGO OUTの記事(以下)では、Alexander G. Parkhomov博士が70歳の誕生日を迎えられたことを知りました。おめでとうございます。70歳にして、従来の常識では説明できない常温核融合を追究するとは何と素晴らしい科学者魂でしょうか。


そのParkhomov博士が研究会で発表されているビデオと資料が公開されました。まずビデオは以下にあります。尤も、これもロシア語?なので、会話の中身は良く分かりません。



そして、発表資料はここにありますが、もちろんこれもロシア語です。しかし、Bob Higgins氏とMFMPプロジェクトの面々が早速英語版を作って以下に公開してくれました。こういう国際的な協調作業が素早く自発的に行われるのは実に素晴らしいと思います。




以上