2015年1月25日日曜日

今年も開催されたMITでの常温核融合セミナー

今年もまたMITでCold Fusion 101という常温核融合セミナーが開催されました。2015年1月20日から23日までの4日間にわたって講義が行われたようです。
今回はCold Fusion Now!と連携してインターネットライブ中継が行われました。Cold Fusion Now!の努力に感謝します。尤も、私自身は後でちょっと見るくらいの不真面目な利用者ですが。


早速、バリー・サイモン氏がE-Cat Worldに参加した感想を送ってくれました。

Report from Cold Fusion 101 at MIT (Barry Simon)
http://www.e-catworld.com/2015/01/24/report-from-cold-fusion-101-at-mit-barry-simon/

このセミナーを主催しているPeter Hagelstein博士とMitchell Swartz博士は、NANORという名前のたいへん小型の常温核融合装置を作成しています。最新の装置には、MagnetismのMを取ったM-NANORsと命名されていて、入出力エネルギー比(COP)で80から100を達成しているそうです。

今年の参加者は去年に比べて少なかったそうですが、その分は、インターネットライブで十分に補われているのではないかと思います。

バリー・サイモン氏はミュージシャンなのですが、常温核融合に興味を持って、特にMITのPeter Hagelstein博士関連のレポートをしてくれています。最後にバリー・サイモン氏の演奏ビデオを貼っておきます。


以上

2015年1月18日日曜日

Jack Cole氏によるE-Cat風の新たな常温核融合装置の実験

またも、E-Cat風の常温核融合装置の実験結果を公開する人~Jack Cole氏~が現れました。敢えてE-Cat「風」というのは、E-Catとは違う材料や発熱方法を使っているからです。例えば、制御のしやすい直流電源を使って入力電力を制御しています(E-Catは交流電源を使っています)。


最新の結果で、10.4ワットの過剰熱を検出したそうです。
本人も科学的な確証と言うには足りないと書いてるし、精度の問題はありそうです。しかし、こういうガレージ実験室で常温核融合を試す人の出現は、今後の実験ラッシュを予感させます。新たな常温核融合エネルギー源を自ら作って実験する時代です。面白くなりますね!

この実験については、Cold Fusion Now!にも本人とのQAが出ています。EbayやAmazonで材料や道具を購入してるみたいです。


E-Cat Worldでは以下の記事にまとまっています。



以上


2015年1月17日土曜日

CFRL News 89 (2015.1.10)発行~軽水系の常温核融合反応発見者は誰だったのか?

小島英夫博士の常温核融合研究所ニュースの新しい号「CFRL News 89 (2015.1.10)」が発行されました。以下から英語版と日本語版の両方をダウンロードできます。


今回は、「CFP 研究の歴史から(3)― R.T. Bush et al. [Bush 1993,1994] による軽水系での核変換の検出」という記事を興味深く読みました。

記事の中にある以下の記述通り、重水素でも軽水素でも常温核融合反応は確認されてきました。
「常温における核反応が重水系と軽水系の両方で起こっている」と考えないと説明できない現象が常温核融合現象なのだということは、動かしがたい事実であると言ってよいでしょう
この中で、軽水系の常温核融合反応の証拠を最初に得た研究者は誰だったのか・・・という疑問について以下の指摘がされています。
Taubes と Huizenga が彼らの著書で同時に取り上げている、Pons についての逸話は、軽水系の常温核融合現象を最初に経験したのが Fleischmann たちではなかったのか、という疑いを持たせるものです。その逸話は、こういうものです:重水系の実験の参照実験(control experiment)として軽水系の実験を行う必要を指摘されたときに、Pons は「軽水系での参照実験をやったが、そこでも過剰熱が測定されることがあったので、重水系での発熱の基準として軽水系を使うことは適当でない」という意味のことを述べたということです・・・<略>
この逸話は、一般には、“Fleischmann たちの過剰熱測定は信用できない”という風に受け取られていて、常温核融合現象自体の存在がインチキだということの一証左、それも大きな証拠と考えられているようです。しかし、その後の 25年間におよぶ実験研究は、軽水系でも常温核融合現象が起こることを明瞭に示しています。重水系と軽水系とで、異なった原因で常温核融合現象が起こると考えることも可能で、多くの試みがなされているのは事実です。
しかし、両者に共通の、これまでに知られていなかった核物性が存在して、軽水系と重水系における常温核融合現象を共通の原因・機構で説明できるのではないか、という立場での解析をすることも可能です。
本当のことは分かりません。でも、もしかすると、フライシュマン博士とポンズ博士は軽水系での常温核融合反応をも発見していたのかもしれない・・・と考えるのは面白いですね。もしかすると、ずっと最初からヒントは投げかけられていたのかもしれません。

以上

イタリアの研究機関ENEAに常温核融合の研究部署?

Facebookで知った話題です。イタリアにはENEA「新技術・エネルギー・持続的経済開発機構」という国の組織があるそうです(以下に関連記事を引用)。



このENEAのサイトを見ると、組織の説明の中に、常温核融合研究者として知られるVittorio Violante博士の名前があります。


イタリア語で書かれた肩書「Coordinamento / Attività relative alle reazioni nucleari a bassa energia」をGoogle翻訳で日本語に翻訳すると「コーディネーション / 低エネルギーでの核反応に関連する活動」となります。
なんと! 国家の研究所の中に低エネルギー核反応=LENR=常温核融合を研究する部署があるようです。イタリアは進んでますね。

以上

2015年1月3日土曜日

ヴィソツキー博士による微生物による元素変換実験(ICCF-18の発表から)

2013年に開かれた国際常温核融合学会第18回大会(ICCF-18)にで、ウクライナのヴィソツキー博士が、微生物による元素転換実験についての発表を行いました。この資料は以下に公開されています。

https://mospace.umsystem.edu/xmlui/bitstream/handle/10355/36823/TransmutationStableRadioactivePresentation.pdf 
Transmutation of Stable and Radioactive Isotopes in Biological Systems (short prehistory, phenomenology, experiments, reasons and perspectives)
Vladimir I. Vysotskii Kiev National Shevchenko University, Kiev, Ukraine
Alla A. Kornilova Moscow State University, Moscow, Russia
講演ビデオは以下にあります(が、聞き取りが難しくて見てません・・^^;)。


この発表は、これまでのヴィソツキー博士のBiological Transmutationの研究成果をまとめたもののようで、たいへん貴重な資料だと思います。以下に私の感想を交えつつ簡単に紹介します。

微生物による元素変換は、放射性物質にのみに起こるだけでなく、安定した元素でも観測されているとのこと。色々な実験の改善を経て、22頁の記述によるとマンガン55から鉄57への変換実験では、1グラムあたり10マイクロミリグラムと相当な量の鉄57が検出されてるようです。
The total mass of Fe-57 isotopes that was created is about 10 mg per each g of dried biological substance or by 20 times more than in the case of "one-line" culture.
23頁には、分かりやすい元素分析の結果グラフが載っています。Fe57(鉄57)の量が増える一方で、Mn55(マンガン55)の量が減ってる事を示しています。


この結果は、MCT (microbial catalyst-transmutator) と著者が呼んでいる色々な細菌と元素の複合体によって得られています。なぜ、単一種の細菌ではなく、複雑な系を用いるのか不思議だったのですが、その理由も17~18頁に書いてありました。以前は単一種の細菌を使っていたらしいのですが、それよりもMCTの方が効果が大きく、かつ、長期間実験可能、というのが理由のようです。面白いですね。



そして、28頁から、原子炉で放射能汚染された水に対してMCTを使って、放射線低減効果を検証した結果が出ています。非常に重要な結果だと思います。

29頁(下図)には、原子炉から取り出して10日経った放射能汚染水のガンマ線のスペクトルが示されています。様々な核種が含まれている事が分かります。


30頁は処理のフローチャートです。といっても、一方は水のままで、他方はMCTを適用するという単純な構図です。


31頁に上記の2つの水の放射線を示すグラフが出ています(横軸は経過日数で、5日毎に計測しています)。何も加えていないQcontrolに対してMCTを加えたQcultureの方が放射線の低減が大きくなっているのが分かります。最初の10日間は両者に殆ど差がないのも面白いところです。


そして、次に出てくるのが、以前にも紹介したCs137の放射線低減実験です。33頁に実験のフローチャートが示されています。対照系2種類を含む8種類のケースで放射線を計測しています。

結果は以下の通り。MCTを混ぜたケースでは、その他の添加物(NaClやCaCO3)に応じて違いがあるものの、Cs137の半減期30年よりずっと速いペースで放射線が弱まっています。最大の効果が得られたケースでは、半減期は約310日と観測されており、通常より35倍速いペースで放射線が弱まっています。

最後に、39頁にある重要な文章を引用します(和訳は引用者がつけました)。


The presented results show perspectives of use of the effect of stable and radioactive isotopes transmutation in biological systems for natural and industrial applications.
実験結果は、自然界や産業にとって、生態系の中で安定同位体および放射性同位体へ与える影響を利用できる展望を示しています。
These results can give the answer to the question of the reasons of abnormal accelerated decrease of environmental radioactivity in some isolated areas inside Chernobyl accident zone with initial high level of radiation pollution
これらの結果は、初期に放射線汚染が高水準であったチェルノブイリ事故地帯の幾つかの孤立した地域で、環境放射線が異常な速度で減少した謎への答えなのかもしれません。 
この事実の詳細を把握できていませんが、もし本当なら、福島原発災害で放射能に国土を汚染された日本にとっても大きな福音になるでしょう。こういった研究にはもっと予算をつけて推進して欲しいものだと思います。

以上

2015年1月2日金曜日

真空中でのテープ剥離で生じるX線

今回も常温核融合研究と関係がありそうですが、別分野の記事を取り上げます。
2008年と少し古い報告なのですが、これも驚きの現象です。テープを真空中でピリピリと剥がしていくだけで、X線が発生しているというものです。ビデオの中では、テープから出るX線で指のレントゲン写真を撮っているシーンまで出てきます。


ビデオ全編は以下にあります。テープ巻取り装置を真空にして、巻取り(による剥離)を始めるとガイガーカウンターが激しく音を出しています。ビックリしますね。


この実験のキーワードである、Stick Slip(スティックスリップ:滑り摩擦)やTriboluminescence(トライボルミネッセンス:力学的作用が引き起こす発光現象)で検索すると色々な記事が出てきます。中でも、日本語版ワイヤードに載った記事は以下のような魅力的な写真を掲載しています。




また、日本語で簡潔にこの実験の結果を書いた記事もありました。この実験では真空環境にしているのが一つのポイントだったようです。


日本でも実験結果を報告してくれている人がいます。以下のPDF資料には、ガムテープやら飴を使った実験が出てきます。放射線は測っていませんが、光は観測できています。こんなに身近にある現象だとは知りませんでした。


以上

2015年1月1日木曜日

謹賀新年: 常温核融合は既に世界を変えつつあるのか?

あけましておめでとうございます。本年も更に常温核融合への認知が進むことを願っています。どうぞよろしくお願いします。

本年最初の話題は、原油価格の下落と常温核融合の関係についてです。E-Catの第三者検証レポート第二弾をいち早くWebで公開したSifferkoll社は、このレポートが下落の引き金を弾いたという説を展開しています。12月30日にも「Big Banks and Big Oil Increasing their already Massive Short Position in WTI Crude Oil (/CL)」という題名の記事が公開されました。記事は以下のような文章から始まっています。
CFTC.GOV CoT data from December 16 reveales that while WTI oil went from $68 to $55 the big banks and oil companies were among the sellers. During the two week period from Dec. 2 to Dec. 16 they increased their already massive short position by ~40,000 contracts to  a ~380,000 contract short position. A more than 10% increase in two weeks…
これによると、WTI原油価格が$68から$55に値下がりしたにも関わらず、巨大銀行と石油会社はショートポジションを拡大している(=値下がりを予測した投資を行っている)ようです。まだまだ下落は続くと予想されているのです。(経済の知識が不足しているので間違っていたらすみません。気になる方は原文を確認してください)

そして、この値下がりが従来のトレンドを逸したものであることを示すために、米国株式市場における小型株式セグメントのパフォーマンスを示す指標であるラッセル2000と原油価格の比率を時系列で追ったグラフを載せています(下図)。
私は、この比率の意味を理解していません。しかし、右端の方にある10月初めから明らかに傾向が変わった事は分かります。そして、その節目で何が起こったか? 節目である10月8日は、ロッシ氏の常温核融合装置E-Catの第三者検証レポート第二弾(通称Lugano Report)が公開された日なのです。


原油価格を決める要因は多数あります。今回の下落についても、世界的な不況による需要減退やシェールガス対抗のための供給過剰の要因などが指摘されています。まだ殆ど認知されていない常温核融合技術が要因になっているとは信じ難いところがあります。

それでも、この奇妙なタイミングの一致は気になります。もしかすると、常温核融合は私が想像していたよりも遥かに大きな衝撃を世界経済に及ぼし始めているのかもしれません。Lugano Reportでは、E-Catが32日間にわたって安定したエネルギーを生産し続けられる事と共に、使用前・使用後で燃料の同位体構成が変わっている事が確認されました。何らかの核反応によって、非常に高い効率で安全にエネルギーが生産できると分かったのです。

まだE-Catは実用化されていません。しかし、あと数年のうちに実用化されるのは間違いないでしょう。E-Catの主燃料は水素・ニッケル・リチウムと見られています。エネルギー発生効率の高さから見て、もはや人類はエネルギーの枯渇を心配する必要は無くなりました。つまり、石油の枯渇を気にする必要が無くなったのです。

これまで、石油は「いつか枯渇するエネルギー源」でした。余りにも当たり前で意識しなかったのですが、実はその前提が石油の価格を支えて来たのかもしれません。この前提が崩れたために、石油は売り手の多いコモディティ商品の一つになったのではないでしょうか。そうだとすれば、価格の叩き合いで、原価に「適正な」利益を乗せたところまで値下がりは続くでしょう。その適正さを決めるのは、原産国ではなく市場です。

私は、なぜオバマのような政治家が常温核融合を高らかに発表しないのか疑問に思ってきました。過剰な期待だっただけなのかもしれませんが、上記のような考察が正しいなら、もしかするとインパクトが大きすぎてコントロールできなくなるリスクが高いからなのかもしれません。2015年には政治や社会が大きく変わって行くでしょう。その真因を見極める際には、常温核融合を頭に入れて考えたいと思います。

以上