2014年1月20日月曜日

ブラックライトパワー社が1月末にエネルギー生成装置のデモを宣言

昨年暮れから常温核融合関連の話題が尽きなくて話題に追いつけない毎日です。今度は、ミルズ博士(Dr. Randell L. Mills)率いるブラックライトパワー社(BlackLight Power, Inc.)が、「水」を燃料とし、数メガワット級のパワーを生み出す炉のデモを今月末に行うと発表しました。早速、E-Cat Worldにも取り上げられています。以下はファイナンシャル・ポストに載ったプレスリリースです。
http://www.financialpost.com/markets/news/BlackLight+Power+Announces+Game+Changing+Achievement+Generation+Millions/9384649/story.html
NEWS RELEASES
BlackLight Power, Inc. Announces the Game Changing Achievement of the Generation of Millions of Watts of Power from the Conversion of Water Fuel to a New Form of Hydrogen
BusinessWire · Jan. 14, 2014 | Last Updated: Jan. 14, 2014 5:01 AM ET
このブラックライトパワー社は1991年に設立された老舗の新エネルギー開発ベンチャー企業です(老舗のベンチャーと言うのは変ですが)。創設者のミルズ博士はかつてニッケル・水素系の常温核融合実験をしていたようです(小島英夫博士の「「常温核融合」を科学する」という本の参考文献として参照されています:Mills, R.L. and P. Kneizys, Excess heat production by the electrolysis of an aqueous potassium carbonate electrolyte and the implications for cold fusion. Fusion Technol., 1991. 20: p. 65.)。


という訳で、常温核融合研究者の間にも知られた存在なのですが・・・残念ながら評判は悪いのです。その一番の理由は、ミルズ博士の提唱する「ハイドリノ」理論にあります。この理論では、原子を構成する電子が今まで知られている「基底状態」よりも更に低エネルギーな状態に落ち込めると言ってます。一番底にあるから「基底」と言っていたのに、更にそれは底では無かったと言っているのですから、(たぶん)現代物理学の否定なのだと思います。

この件については、高橋亮人博士が著書の「常温核融合フロンティア 2011」の中で、以下のように評価しています。
2.7 古典力学モデルには無理がある(Mills, Muelenberg, Heffner, Storms)
R. Millsは、以前より水素原子にはsub-ground-stateが存在できるとするhydrinoモデルを展開している。主量子数nの逆数の量子状態が存在できて、ミニ水素原子Hydrinoが生まれる、と主張する。通常の水素基底状態のエネルギー13.6eVより、数倍大きな結合エネルギーをもつHydrinoに遷移するときBlack-lightを発生して、過剰熱が発生する、と演繹する。彼の理論では、電子波導関数は、厚さゼロの球面を描くデルタ関数である。中心からの動径上にR=Rn, R1/nの球面がBohrの量子条件を満たすように決まる。どこがおかしいのであろうか?
簡単である。Heisenbergの不確定性原理を無視していて、正統な量子力学になっておらず、「量子論的粉飾をした古典力学」なのである。動径不確定性ΔRをゼロにしているから、電子を古典力学(Newton力学)のように大きさゼロの点電荷としていることに対応する。Heisenbergの不確定性原理によれば、波動関数はデルタ関数にはなれない。「粒子を大きさゼロの点とみなしたその瞬間に不確定性原理と量子論を否定している。」H原子の基底状態では、クーロン引力による中心力と遠心力が釣り合い、波長332pmのドブロイ波が一周して滑らかに連続するように3次元対称性を保っている[2.2-5]。これがn=1の状態で、1/nのときは、この条件は成立せず、電子は連続的で過渡的な運動をしていて、離散的な固有値をとれない。Millsの1/n状態は、この連続運動(エネルギーも連続)の連続空間を、R1/nの動径で輪切りにしたもので、Bohrの古典量子条件を初期単位にして輪切りする理由は、必然的でない。初期単位は任意の大きさに取れる。R. Millsのhydrino論は量子論からはかけ離れた、間違いなのである。Millsのモデルでは、電子の波長はゼロであり、質点=点電荷の古典力学的連続運動を、動径方向で任意に輪切りにしたものである。n=1の状態も任意に選べるので、1/nは固有値状態にはならない(連続固有値)。
とまぁ、明確に間違いだと言われているのです。尤も、量子力学の素養がない私には、内容はサッパリ分からないのですが(笑)。

では、それでは、このBlacklight Powerが全くのインチキなのかと言うと、そうとも言い切れない以下のような要素があります。

  • ミルズ博士は正統な科学者のようで、多くの論文も書いている。ハイドリノ理論に上記のような大きな穴があるのを放置しておくだろうか?
  • 1991年から何と20年以上も企業を運営してきている。おそらく裏に投資家がいると思われるが、このように長期にわたって投資を続けるには、投資家が認めるだけの明確なエビデンスがあるのではないか?

ミルズ博士が疑問を持つ常温核融合研究者と公開の場で議論してくれれば、少しは真偽が明らかになると思うのですが、これまでミルズ博士は学会等の場には殆ど出てきていないので、何も考える手がかりがありませんでした。

今回のデモで、第三者が評価できるデータが出てくるのを楽しみに待ちたいと思います。

また、この話題が盛り上がったためか、Vortex-lというメーリングリストに現れたマイク・キャレル氏(Mike Carrell)が、幾つか解説をしてくれており、私としては、少し疑問が解けました。

それを2件紹介しておきます。
最初の記事は、 これ です。
[Vo]:Understanding BLP
Mike Carrell Fri, 17 Jan 2014 13:17:50 -0800

内容は難しくて良く分からないのですが、気になるキーワードは、isolated です。ミルズ博士のハイドリノ理論の中心にある「基底状態より下の状態」は、独立した単原子の水素で起こるのではなく、仮想的には独立してない状態で起こるのだ、と言っているように思えます。そうならば、もしかして、量子力学の否定にはつながっていない可能性もあるのでは・・と素人は期待します。
Mills' back-story includes study at MIT where he gained new insight into the physics of accelerated electrons which led to his Orbitsphere model and the possibility of "sub-ground" states induced by the *close proximity* of energy holes presented by catalysts. Mainstream physics teaches a "ground state" of *isolated*hydrogen atoms. The "Resonant Transfer" reactions postulated and experimentally verified by Mills requires the **close proximity** of an energy hole receptor of specific magnitudes to effect a *non-radiative energy transfer* from the H atom, destabilizing it, which then shrinks into the hydrino state. In that moment, the H atom is no longer *isolated*.
2つ目は、これ です。
もう一つ疑問に思っていたのは、基底状態より下になった原子はどうなるのか?という点でした。またエネルギーを吸収して元に戻ってしまうのだとすると、元も黙阿弥で過剰熱は発生しないのでは?と疑問に思っていました。どうも、この記述を見ると、そのまま安定した状態の水素になって存在し続けるみたいです。
RE: [Vo]:Understanding BLP
Mike Carrell Sat, 18 Jan 2014 11:46:49 -0800
Hydrinos are hydrogen atoms whose electrons are at a lower energy state and whose orbital radius is reduced. The can for compounds as hydrides, but such is not yet exploited because of a lack of quantity. They are lighter than air and non-toxic.
以上

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