2013年5月26日日曜日

ナノ銀によるゴミ焼却灰の放射線低減実験

ナノ銀によるフィールドでの除染実験」にて、ナノ銀を使って保育園の屋根の洗浄水の放射線を低減する実験結果を紹介しました。阿部宣男博士から、もう一つ、非常に興味深い実験結果のデータを見せていただいたので、ここに紹介します。

ゴミの焼却灰の放射性物質濃度が高いために埋め立て処分できず、いつまでも一時保管庫に置かざるを得ないという問題が起こっています。この実験は、放射線物質を含む焼却灰にナノ銀(ナノ純銀)担持材を混ぜることで放射線の低減を図り、その効果を計測したものです。千葉県柏市南部クリーンセンターにて、2012年3月28日9:30〜11:45に実施されました。

この実験の結果をまとめたレポートは以下です。阿部宣男博士からいただいたレポートを元に、見やすいように筆者が少し手直しをしました。海外の方にも分かるように英語を補ったのは筆者です。また、何かご迷惑をかけるといけないので、阿部宣男博士以外の個人名を削除しました。


実験の概要は以下の通りです。

  • 焼却灰12Kgずつをペール缶に取り出し、3種類の試験濾材を混ぜ、25分後と30分後に放射線を計測した。
  • 25分後の計測では、試験濾材を混ぜた灰をジップロックポリ袋に数百グラム程度取り出したものを計測した。30分後の計測では、試験濾材を混ぜた灰をペール缶に入れたまま計測した。
  • 3種類の試験濾材は以下の通り:
    A 水道水3.6リットル(対照実験として)、
    B ナノ純銀担持コラーゲン溶液10ppm 3リットル+ナノ純銀担持骨炭3Kg、
    C ナノ純銀担持コラーゲン溶液20ppm 3リットル+ナノ純銀担持骨炭3Kg
    (BとCはナノ純銀担持コラーゲン溶液の濃度が異なる)。
  • この結果、BとCのケースでは放射線の強度が低下。例えば、Cの30分後のペール缶の計測では、当初6.12μSvあったものが、試験濾材を混ぜた直後に4.00μSVに低下。30分後の放射線強度は直後と大きな差は見られない。

岩崎信博士が研究会で発表された予稿に載っている実験では、同じように、ナノ銀骨炭を試料に混合した直後に大きな放射線の低減が起こっています。また、その後、放射線の減少は止まったかに見えるのですが、再度水を入れて攪拌すると再び低減が起こっています。

この事から考えると、今回紹介した焼却灰を使った実験でも、再度攪拌すると更なる低減が起こったのではないかと期待できます。残念ながら、この実験時には時間的な制約から30分後までの計測だったようです。

今も毎日、埋め立て処分できないほど汚染レベルの高い焼却灰が増え続けています。今後何十年にもわたって危険な灰を保管し続けるリスクを考えれば、ナノ銀を使った放射線低減は試す価値があると思います。ゴミ焼却に関心を持たれる方々には、是非、試してみていただきたいと願う次第です。

以上

2013年5月21日火曜日

E-Catの第三者評価論文のプレプリント版が公開されました

とうとう首を長くして待っていたE-Catの第三者検証論文のプレプリント版が公開されました。ecat.comの以下の記事で告知されました。プレプリントは ここ からダウンロードできます。


コーネル大学のarXiv.orgにも登録されています(以下)。


プレプリントは29ページあり、表紙は以下のような感じです。

色々なブロガーがこの件を取り上げています。例えば以下。


まだ殆ど目を通していませんが、常温核融合現象やE-Catに対して肯定的なレポートです。幾つかの記事を参考に要約すると以下のようになります。

イタリアのボローニャ大学とスウェーデンのウプセラ大学の科学者が、アンドレア・ロッシ氏の発明した常温核融合装置E-Cat HTを検証。約百時間のテストを二回行い、化学的に生成できる熱量とは桁違いの過剰熱を検出した。二回のテストでの出力は、それぞれ入力の5.6倍、2.6倍に達した。E-Cat HTのHTとは、High Temperatureの略。通称Hot Catと呼ばれている。最初のE-Catの発熱温度が約100度であったのに対し、数百度の温度で発熱する。今回の二回のテストでは、それぞれ302度、438度の平均温度だった。

最後に論文に含まれていた写真から抜粋させていただきます。赤く輝くE−Catは幻想的な印象を与えますね。





以上

2013年5月12日日曜日

デフカリオン社へのインタビューから見える常温核融合に取り組まないリスク

カナダのバンクーバーに移転したデフカリオン社は、昨年夏のNIWeek 2012とICCF-17で常温核融合装置Hyperionの発表を行なって以降、目立ったニュースもなく、沈黙しているかのようでした。このデフカリオン社のCEOであるAlex Xanthoulis氏とコミュニケーション&ビジネス開拓ディレクタのSymeon Tsalikoglou氏へのインタビュー記事がPESNの4月4日版に載りました。

このインタビューの内容が興味深いものだったので、簡単に要点をまとめます(赤色は私が付けました)。
  • 8月に開かれるナショナルインスツルメンツ社のイベントNIWeek2013に実働デモを出展し、技術的なプレゼンテーションを行う。CEOのAlex氏は、ナショナルインスツルメンツ社CEOのJames Truchard氏の物心両面の支援に感謝している。
  • 7月にミズーリ大学で開催されるICCF-18では、準備が難しいためデモは行わず、プレゼンテーションのみを行う。
  • バンクーバー市長は、2020年までにバンクーバー市を世界で最もグリーンな都市にする目標をもっており、デフカリオン社にも良い環境である。CEOのAlex氏は若い頃、バンクーバー市で過ごした事があり、支えてくれる友人も多い。
  • 過去2年間、デフカリオン社は技術ライセンスに興味を持つ約450社からアプローチを受けてきた。その中から対象を20社以下に絞り込み、常温核融合技術の様々な適用を検討している。その20社の分野は以下の通り:
    Water Desalination (淡水化)、Boilers、Trains、Ships、Airplanes、Satellites、Cars、Motorcycles、Hotels、District Heating、Mining、Telecommunications Towers、IT、Metals、Cements、Pipes、Tires
  • デフカリオン社のビジネスは、製品の販売ではなく技術の販売。
  • 但し例外もあって、造船が盛んなギリシアでは、デフカリオン社自身が適用を考えていた。1万8千トンから2万トンの大型貨物船は、毎日2万ドル相当の燃料を消費する。しかし、デフカリオン社の技術(常温核融合)を使えば、このコストは500ドル/日にまで下がる。つまり40分の1だ
  • Alex氏は、この技術を使った新しい原子力発電所のコストは12分の1になると予想している。1キロワット時あたり約0.35セントになるとの予想だ
  • このユニットが家庭のコジェネレーション発電に用いられたとすると、550平方メートルの家の光熱費は半年で300ドルになるだろう。
  • 反応炉の燃料は少なくとも半年は持つ。テストしているモジュールの一つは8ヶ月を過ぎてなおも動いている。
  • もう一つ、デフカリオン社自身が適用を行なっているのは淡水化だ。これは、Alex氏とSymeon氏のお気に入りのプロジェクトだ。世界中の人々に手頃な価格で水を提供できるだろう。エネルギー費用がネックになっているので、この技術が役に立つ。
  • 自動車への適用は欧州最大の自動車会社が取り組んでいる
  • テレコム系への適用は、産業最大級の企業のうちの一社が取り組んでいる
  • 飛行機についても同様だ
  • これらの大企業のうちの一社が、今後6ヶ月以内にこの技術について大きな発表を行う予定だ。最初の商用製品は、2014年の上半期に出てくるだろう
  • デフカリオン社は提携の前に、その分野に同様の適用計画がない事を確認しており、各提携はその分野について排他的になっている
  • ある米国の企業が、デフカリオン社の技術を6ヶ月にわたって評価した。その結果、危険な放射線は出ておらず、若干のガンマ線は観測されるが家庭用トースターより弱い位だったとレポートしている。
  • バンクーバーの本社では約20名の従業員が働いており、世界中に設立した7箇所の研究開発拠点では約17名が働いている。
如何でしょうか? 非常に重要なのは、既に20社近くの企業、しかも、おそらくは各分野を代表するような大企業がデフカリオン社と共同で技術検討を行なっているとの表明がなされている事です。しかも、各分野毎に契約は1社とのみ排他的に結ぶという戦略を取っているとも表明しています。この1社は、常温核融合技術を手に入れる事によって、その業界の中でずば抜けた製品を提供できるでしょう。逸早く常温核融合の可能性に気が付き、技術開発に早く着手した企業が市場で圧倒的な優位性を築くことになるかもしれません。

この記事を読んでいる経営者や投資家のみなさん、常温核融合が世間に認知されてからでは遅いかもしれません。技術評価に着手すべき時が来ています。騙されたり、失望に終わったりするかもしれない? そうですね、そういったリスクは無いとは言えません。しかし、手をこまねいて見ていて着手が遅れるリスクはどんどん大きくなっています。早く可能性に気がついてください。


以上

2013年5月7日火曜日

公開されたE-Cat出荷時の写真

4月末のE-Catの出荷時に撮った写真を公開するとロッシ氏は発言してきましたが、どうやらそれに応じて、JONP(ロッシ氏のブログ)のコメント欄に写真が公開されました。これを見ただけでは、何が証明されたという訳でもなく、従来型のE-Catについては1MWプラントが無事に出荷されたらしい、と言えるだけです。

JONPのコメント欄にF.Fabiani氏から投稿された写真(7枚)










Hot Catの写真?

これと時期を同じくして、ダニエルさんのブログに高温を発するHot Catと思われる写真が投稿されました。真っ赤になった円筒形の物体がHot Catのコアではないかと思われますが、詳しい事は不明です。また、これは、6ヶ月前に撮影された写真との事です。


以上

2013年5月3日金曜日

ナノ銀によるフィールドでの除染実験

ナノ銀による除染実験で一つ気になっていたものがありました。2011年12月10日に郡山市の某保育園にて行われた汚染水の放射線低減実験です。幾つかのブログや動画にデータが出ていたのですが、全体の流れが良く分かっていませんでした。

今回、阿部博士からデータを見せていただいたので以下にまとめます。初期に行われた屋外でのフィールドワークなので実験の厳密性には欠けると思われますが、それでも明らかに線量が低減しています。放射性物質が濾材に吸着したため汚染水の線量が低減した可能性を疑いましたが、その後、濾材の線量も低減しています。まるで放射性物質がどこかに消えてしまったかのようです。

常温環境で自然の半減期を上回る速度で放射性物質の線量が低減する筈がない・・・のですが、この実験では低減しているように見えます。これは非常に重要な実験結果です。是非、他の研究者の方々の追試を期待したいと思います。

1. 実験概要

2011年12月10日、郡山市のある保育園にて、屋根の除染工事と同時にナノ銀による放射線低減実験を行った。
通称「ルーシー」と呼ばれている濾過装置は、ナノ銀坦持骨炭+白御影石を濾材とする4段の装置で水を濾過する。このルーシーを使って合計3回の濾過を行い、各段階で採取された水の汚染度をゲルマニウム検出器によって測定した(測定は専門業者による)。
その結果、濾過によって除染水の放射性物質濃度は初期値に比べて1/10にまで低下した。さらに、この濾材の一部の線量を8日間測定したところ、ほぼ初期の50%以下に低減した。

2. 実験の様子

【保育園での実験の様子を収めた動画】


 【濾材の放射線測定の様子を収めた動画】


3. 実験結果

専門業者による測定結果は以下の通り。値は、除染水の放射性物質の濃度(Bq/L)を示す。時間的な制約により3回目で濾過処理を終了した。
(Bq/L) 原水 1回目 2回目 3回目
Cs-134 13300 1840 1350 1340
Cs-137 18800 2490 1910 1830
<郡山除染汚染水処理 作業日2011-12-10: 中外テクノス報告書より抜粋>

4段構成の濾過装置の2段目の濾材の放射線の線量を8日間測定した結果を以下に示す。数値は線量(μSv/時)を示す。全段の濾材の平均で見ても最終的な線量は12月11日時点の線量の50%以下に低減した。

測定日(yyyy-mm-dd) 放射線(μSv/H)
2011-12-11 0.56
2011-12-12 0.35
2011-12-13 0.36
2011-12-14 0.37
2011-12-15 0.29
2011-12-16 0.23
2011-12-17 0.24
2011-12-22 0.22



郡山での作業日は12月10日であり、濾材はこの日に除染水と接触していた。上記の各数値は12月11日からのデータであり、12月10日作業直後の線量はもっと高かったと推定される。また、バックグラウンド線量が測定されていないので、これを差し引いてない。これらを考慮すると実際の減衰率はもっと高かったものと推定される。

以上

【修正】この記事を書いた時に測定場所をホタル館と勝手に解釈していましたが、確認していないので場所の記述を削除しました。